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すばらしい地名

私が出会った山梨の地名で感激したものを二つ紹介する。

その一つは芦川村の「鶯宿(オウシュク)という地名である。

2000年7月、三つ峠に登ったあとで、スズランの花が自生することで有名な芦川村に行きもう一つ新道峠に登った。ここは河口湖の裏山でこの峠から真下に河口湖そしてその正面に富士山がど迫力で見ることができる。何せ河口湖で打ち上げられる花火を上から見る、ことができる場所はここ以外にない。

ここを訪れた後、上九一色村に抜けるために芦川村役場を過ぎたあたりであまりの驚きに車をとめ書かれていた地名を眺めていた。すると竹籠を背負ったおばあさんが「どうかしなさったか」と声をかけてきた。「きれいな地名ですね。こんな地名は始めて見ました。」「鶯宿、オウシュクですよね。この地名の読み方は。ウグイスのお宿なんてとてもきれいな地名ですよ。」というと「ここの80年以上住んでいるけれど、そのような話は聞いたことがない。」「よかったらお茶でもよってけし」とやさしい眼差しで誘って頂いた。山梨で一番感激した地名と人との出会いであった。

ここで少し甲州弁を紹介しよう。甲州弁は市川團十郎も歌舞伎の荒事の言葉の荒っぽさは甲州弁にルーツがあるといわれるように少々粗野なところはあるが、私のネイティブな言語である鹿児島弁のような単語自体が意味不明というようなことはない。例えば@「けっけっけけ。」、A「さいかぶいや。げんなこっちゃったヶ。」、B「げんなかこっちゃ。」、C「むぞか」等まず意味を理解できないと思う。

ところが甲州弁は基本的には「〜け」・「〜し」・「〜ずら」をつけるだけで足りる。

疑問形は基本語に「〜け」をつける。

いますか?‐‐→いますけ?-−→いるけ?

命令形は基本語に「〜し」をつける。

そうしなさい。-−→そうしろし。-−→ほうしろし。

推量形は基本語に「〜ずら」をつける。

そうでしょう。-−→そうずら。-−→ほうずら。

上級者になればなるほど基本形が「ほう」という言葉に変形するようである。

先ほどの「よってけし」であるが前述の基本形に当てはめると、命令の形にあたる。ところがこの言葉は粗野であるとされる甲州弁の中でも最も「優しくて綺麗な言葉」であると思う。この言葉を掛けられると人の情けが感じられる。「よっていきませんか。」と声をかけられるよりなんとなく安心してその言葉に甘えたくなるのは私だけであろうか。このレポートの最後に「山梨県人と人情」というタイトルで書いているところがあるがそこでも思い起こしてほしい。

先ほど紹介した鹿児島弁の意味をお教えしよう。@「貝(アサリのような二枚貝)を取りにきませんか?」、A「久しぶりです。どうしていましたか?」、B「はずかしいことです。」、C「かわいい」という意味である。


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